
楽曲制作のミキシング工程において、キックとベースの低域の重なりや、ボーカルとギターの帯域競合をいかに整理するかは永遠の課題といえます。
帯域が衝突する瞬間だけをピンポイントでコントロールし、被りを抑えたい場合に威力を発揮するのがサイドチェインプロセッサーです。
今回は、クラウドパブリッシングで入手可能なRue Bloseのツール、Oppressorを取り上げてその性能を紐解きます。
プラグインの詳細
Oppressorは、特定の周波数帯域がぶつかる瞬間のみを検出して減衰させる、周波数依存型のサイドチェインコンプレッサー兼スペクトラルアンマスキングツールです。
全帯域を一律にダッキングする従来のコンプレッサーとは異なり、衝突している帯域だけを部分的に抑えるため、原音のニュアンスやパワーを維持したまま空間を確保できます。
- 2種類の検出エンジン:20Hzから20kHzまで対数配置された32バンドの動的ベルフィルターを用いるマルチバンドモードと、最大8192サンプルのFFTサイズを選択可能な256ポイントのSTFTスペクトラルモードを搭載
- ゼロラテンシー動作:マルチバンドモードは直列ピークフィルター方式を採用しており、ゲイン削減が発生していない状態では信号をビット精度でそのまま通過させ、遅延を発生させません
- 高度な帯域コントロール:32バンドから最少8バンドまで集約するSmooth、帯域の分配密度を変化させるCurve、特定の共振ピークのみを狙い撃つSelectivityを装備
- 帯域ごとのアタックとリリース制御:500Hzを軸として高域は最大0.25倍へ高速化、低域は最大4倍へ低速化させるA/R Tilt機能を完備
- 柔軟なチャンネル処理:独立したL/R処理およびM/S処理に対応し、0から100パーセントのリンク率やステレオバランスの調整が可能
- 内部サイドチェイン機能:自トラックの入力信号を検出源とすることで、ダイナミックEQやディエッサー、レゾナンスサプレッサーとしても動作
- サイドチェインEQと監視機能:6dB/octから72dB/octまでのフィルター、Delta機能、Listenモニタリング、レイテンシー補正付きバイパスを搭載
動作環境
| 対応OS | Windows、macOS |
| サポートしているプラグイン形式 | VST3、AU、スタンドアロン |
まとめ
Oppressorは、マルチバンドとスペクトラルの2基のエンジンを備え、ミキシングにおける周波数の衝突を正確に解消するプラグインです。
ゼロラテンシーで動作する32バンド処理から細密なスペクトラル解析まで対応し、キックと808ベースの分離やボーカルの空間確保、バスの共振抑制など多角的な用途に応えます。
M/S処理やA/R Tiltといった細部まで作り込まれた機能により、現代のトラックメイキングにおける精密な空間調整を強力に手助けします。
