
ピアノの即興演奏やふとした瞬間に浮かんだメロディを、そのまま楽譜やMIDIデータとして残したいと願う場面は多いものです。しかし、録音されたオーディオデータから一音一音を拾い上げ、正確な譜面へと書き起こす作業には、膨大な時間と労力が求められます。
今回ご紹介するIvoryは、ウェブブラウザ上で動作する最新のAI技術を駆使したピアノ転写ツールです。録音ファイルをアップロードするだけで、複雑な和音や打鍵のニュアンスを解析し、即座にデジタルデータへと変換するこのツールは、作曲家やアレンジャーのワークフローに革新をもたらす可能性を秘めています。
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Ivoryの詳細
Ivoryは、ウェブベースで提供されるAI駆動型のピアノ転写ソリューションです。その中核となる機能は、MP3やWAV、MP4といったオーディオファイル、あるいは既存のMIDIファイルを解析し、編集可能なMIDIデータやMusicXML、PDF形式の楽譜へと変換することにあります。最大15MBまでのファイルサイズに対応しており、録音されたピアノの音を迅速に視覚化することが可能です。
特筆すべき点は、単なるオーディオからMIDIへの変換ツールに留まらない点にあります。Ivoryはブラウザ上で動作するインタラクティブなピアノロールおよびスコアエディタを備えており、解析後のデータをその場で修正することが可能です。AIが判別を誤った箇所や、より細かな表現を加えたい箇所を、外部のソフトウェアを介さずに直接調整できる仕様は、作業効率を大幅に向上させます。
技術的な側面では、高度なAIアルゴリズムが打鍵の開始(オンセット)と終了(オフセット)を精密に検出します。また、ピアノ演奏において不可欠な左手と右手のパート分離、コード検出、そして読みやすい楽譜にするためのスマートクオンタイズ機能も搭載されました。これにより、即興的な演奏であっても、整った形式の楽譜として出力される仕組みが整っています。
現在の提供形態として、無料プランでは月に最大100件の録音を変換できますが、1件あたり45秒の制限が設けられています。一方で、月額8.99ユーロ、または年額59ユーロの有料プランに加入することで、時間の制限なくフルレングスの楽曲を月に100曲まで変換できるようになります。
さらに、今後のアップデート予定も非常に野心的です。主要なDAWであるLogic Pro、Ableton Live、FL Studio、Cubase、Reaperとの直接的な統合が計画されています。これが実現すれば、ブラウザとDAWを行き来することなく、プロジェクト内で直接オーディオをMIDIへと変換できるようになり、制作の流れを止めることのないシームレスな環境が構築されることでしょう。
まとめ
Ivoryは、AIの力でピアノ演奏をデジタル資産へと変える、極めて実用的なツールです。転写の正確性に加え、ブラウザ上で完結するエディタ機能や右手と左手の自動分離といった機能は、既存の変換ツールの一歩先を行く利便性を提供しています。制作の初期段階におけるスケッチや、過去の録音からの譜面作成など、音楽制作のあらゆる場面で時間の節約に貢献するでしょう。DAWとの統合が実現すれば、ピアノを主体とする音楽家にとって、欠かすことのできない制作パートナーになることは間違いありません。