皆様お疲れ様です。AZU(@AZU0000)です。
DTMで曲を作る際にはジャンルによってさまざまな楽器の音を使うことになります。
そして多く音を入れるとそれだけ「トラック数」が増えていくのは当然のことなのですが、よくDTMやレコーディング関連の雑誌などを見るとおびただしい数のトラックが並べられていることがありますよね。30や40なんて割と少ない方で多い場合には100を超えるなんてものも珍しくありません。
そして自分の制作したものを見てみると「俺の曲、全部で10トラックくらいしか使ってないやん…」という人もおそらくいると思うのですが、それってダメなことなのでしょうか?
プロの現場ではものすごく多いトラックを使っているからクオリティが高いのか、少ないトラックだと市販のCDのようなクオリティは出せないのか、今回はその辺について少し書いていきたいと思います。
何であんなにトラック数が要るのん?
確かに「DTM MAGAZINE」などでアーティストやエンジニアの特集をしている時のDAWのセッション画面にはかなりのトラック数に分かれた状態で表示されていますよね。
40トラックあたりだと比較的少ない方で、基本的にはその倍以上のものが多かったりします。
倍ということは80トラックということになりますが、曲によってはさらに多いこともあり、「そんなに使うほど何やってんねん」とお思いの人もいるのではないでしょうか。
アレはですね、主に「それぞれの楽器を細分化している」、「音を重ねている」、「ピンポイントで入れている音がある」、「ボーカルの処理」という用途に分けられている事が多いです。
音を細かく分けてきちんと編集、処理をすることでプロのクオリティを引き出しているということですね。
【DTM】音楽制作においてよく使われる「パラデータ」って何なの?
それぞれの楽器を細分化がトラック数に関わっている
単純にドラムだけで考えても幾つかのパーツによって成り立っている楽器なので、それぞれの太鼓やシンバルにトラックを使えばそれだけトラック数も増えるということになります。
オーソドックスなドラムセットの場合は、キック、スネア、タム×3、ハイハット、ライドシンバル、クラッシュシンバル×2、と9個ほどのパーツに分かれるのですが、この時点で9トラックが必要ということになります。
更に細かく音を作る際にはスネアのトップとボトムを分けたり、ルーム全体の音を入れたりもするので、セットの編成によっては10トラック以上使うこともあります。
ベースは通常のポップスやロックでは基本的に1つですが、ダンスミュージック系であれば2,3種類の音を使い分けたり同時に鳴らしたりします。
他にもギターはバッキングとリードに分かれているし、ストリングスやブラスもそれぞれの楽器のパートに分けてしまうと相当な数になってしまいます。
こんな感じで細かく分けていくと必要最低限であってもそれなりのトラック数になってしまいます。
音を重ねるって何を重ねてるん?
音作りにおいて「音を重ねる」のは基本中の基本です。
絵でもそうなのですが、さまざまな色を重ねていくことで「深み」や「厚み」をつけていきます。
音楽も同じく音を重ねることによって同じように深みや厚みを曲に持たせていく事ができます。
「音の細分化」と重なりますが、ドラムやベースなどの音を使い分ける際に「同じ演奏を同時に鳴らす」場合があると書きましたが、あれが音を重ねるということです。
キックにしても特性の違うものを複数重ねることによって厚みだけではなくオリジナリティのある音に仕上げることもできちゃいます。
ギタリストでこだわりの強い人は同じ演奏を数多く重ねて分厚いバッキングを作り上げたりすることもありますよ。
デヴィン・タウンゼンドは「ウォール・オブ・サウンド」と称したウソのよう数の音を重ねた多重録音サウンドで有名です。
あの人、本当に何トラックくらい使うんでしょうかね。
ピンポイントで入れている音
この辺は近年のJ-POPでは当たり前になっているのですが、常時鳴っている音ではなく、ちょっとしたポイントで鳴らす音、大げさに言えばサビなどでドカーンとした音やキラキラした音なんかをシーンに合わせて効果的に入れたりしています。
他にもそのシーンだけのシンセのフレーズなんかもあったり。
硬派なロックではあまり無い音ですが、J-POP、アニメソングなどではかなり多くの音が盛り込まれていたりします。幻想的な曲なんかでもそうですね。
こうして1曲の中に幾つかの効果音的な音を入れていくと、いつの間にか結構なトラック数になっていたりします。
アイドル系の曲やアニメソングなどはそういった音を数多く聴くことができるので、どのような感じで音が使われているかを聴いてみるのも結構楽しいですよ。
ボーカル・コーラスパートの処理
ボーカルパートに一番トラックを使うという人もいるのではないでしょうか。
ポップロックで多い編成はメインボーカルとコーラス2本の3トラック編成ですが、これでOKの場合もあれば更にトラック数を増やす必要がある場合もあります。
一番多いのはメインボーカルを数本重ねる場合です。特にサビ等の盛り上がる場面ではメインボーカルをダブルで重ねて厚みを出すのがセオリーとなっています。
コーラスパートもこだわる人は細かくパートを分けたり数多く重ねたりする人もいて、ボーカルパートだけで10トラック以上使う曲も珍しくありません。
また、特定の場所だけボーカルの加工が違う場合もそこに新しいトラックを使います。かなり強めにエフェクトを掛けたりラジオボイスみたいにする場合などがそれですね。
私はたまにサビの処理だけは別のトラックで行う場合があります。
声を重ねることで生きてくるボーカルさんもいたりするので、楽器などの編成は比較的少なめのトラックでも、ボーカルトラックにものすごくトラックを使うこともあり、場合によってはボーカルが一番トラック数が多いなんていうこともあります。
最低限どれくらいのトラック数を使えばそれっぽくなるん?
ここまで書いてきたこと&私個人の考えを踏まえてみると…
ドラム:10トラック(各パーツ+ルーム全体+パーカッションなど)
ベース:1トラック
ギター:4トラック(バッキング2本+リード+その他上モノ)
シンセ:3トラック(ピアノ+ストリングス+パッドなど)
ボーカル:4トラック(メイン1本+ダブル1本+コーラス2本)
ポップロックの最低限の編成だとこんな感じでしょうか。合計22トラックです。
40でも比較的少ないと言われていますが、これくらいあれば個人的には問題はないと思っています。
私はオーソドックスなポップロックを作る際にはこの辺りをスタート地点としています。
ここからさらにストリングスを細分化させたり、他の楽器を加えたりするとすぐに40トラックほどになりますが、無駄なトラックの増加はデメリットも出てくるのできちんと考えながら音を乗せていくことが大切です。
私の楽曲はボーカル曲であれば平均30~40トラックあたりです。
結局トラック数は多ければ多いほどいいの?
結論から言えば「それはない」です。「トラック数が多い=直接的な曲自体のクオリティの向上」とは私は考えていません。
もちろんトラック数が多ければそれだけオケはゴージャスになり、厚みと聴き応えのあるものになるのは確かです。
ですが、ピアノやギター1本で歌う曲でも素晴らしいものは国内だけでも配り歩けるくらい存在しますので結局一番大事なのは「楽曲そのもの」です。
ゴテゴテと必要以上に音を足していけば、物理的に音がぶつかる原因にもなるし、主題がぼやけて結局何を伝えたい曲なのかが分からなくなってしまっては本末転倒です。
トラック数やそれに伴うプラグインが増えればそれだけPCのマシンパワーが必要になってくるので、限界を超えてトラックを増やしてしまうと再生した瞬間にDAWが落ちてしまうことも…ありますよ?
なのでトラック数を増やすということはそれだけPCの性能や、多くの音を綺麗にまとめるエンジニアとしての力量が必要になるということです。
基本的にこういった音楽制作は「引き算」で考えるのが良いとされているので、「必要な音をきちんと選んだ結果」としてのトラック数の多さ、というのがベストなのではないでしょうか。
個人的には「一音の価値」を高めることに力を注ぐのがベストなのではないかと言う考えです。
という事で今回もお付き合い頂きましてありがとうございました。