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Native Instrumentsが予備的な破産手続きを開始。

音楽制作に携わる方であれば、誰もが一度はお世話になっているであろうNative Instruments、通称NIにまつわる驚きのニュースが飛び込んできました。

私たちが長年愛用してきたKOMPLETEやMASCHINEの生みの親が、ドイツで予備的な破産手続きを開始したというのです。この知らせを聞いて、明日から自分の愛用しているプラグインが使えなくなるのではないか、あるいはハードウェアのサポートが打ち切られてしまうのではないかと不安を感じた方も多いのではないでしょうか。

私自身、このニュースを初めて目にしたときは大きな衝撃を受けました。デジタル時代の音楽制作において、NIは単なる一企業ではなく、業界のスタンダードを築き上げてきた巨人です。

その巨人が足元を揺らしているという事実は、DTMという文化そのものの不安定さを象徴しているようにも感じられます。しかし、ここで冷静になって状況を整理してみる必要があります。

「予備的な破産手続き」とは何を意味するのか

今回の件で最も重要なのは、これが事業を清算して消滅させるための手続きではなく、経営陣が再建を目指すか、もしくは売却するかを判断する段階で、ドイツの法律に基づいた自己管理型の法的整理であるという点です。

つまり、会社がすぐになくなってしまうわけではありません。私たちが日々制作で使っているソフトウェアのライセンスが突然無効化されたり、サーバーが停止してアクティベーションができなくなったりする事態は、現時点では想定されていないと考えてよいでしょう。

Plugin Alliance、BrainworxのゼネラルマネージャーであるMo Volans氏が、FacebookのPlugin Alliance Audiophilesグループへの投稿で「Plugin Alliance傘下の事業体は破産申請の対象外です。ランゲンフェルトおよび米国における事業は、引き続きこの手続きの対象外です。今のところ、業務は通常通りです。製品リリース、サポート、インストーラー、その他すべての活動はこれまで通り通常通り継続いたします」とあります。

私たちが知っておくべきは、NIが直面している課題が、単なる売上の不振だけではないということです。背景には近年の急激な業界再編や、投資ファンドによる買収、そして競合他社との激しいシェア争いがあります。企業が巨大化し、多くのブランドを抱え込む中で、組織としての柔軟性が失われてしまったのかもしれません。

今回の法的整理は、肥大化した組織をスリム化し、再び革新的な製品を生み出すための筋肉質な体質に戻るための荒療治の可能性も十分に考えられます。

巨大グループSoundwideと業界の再編

ここ数年、NIはiZotopeやPlugin Alliance、Brainworxといった名だたるブランドとともに、Soundwideという巨大なグループを形成していました。

これらすべてのブランドが統合され、一つの大きなエコシステムを構築しようとしていた時期がありました。ユーザーとしては、異なるメーカーのプラグインがシームレスに連携し、一括で管理できる未来に期待を寄せていたものです。しかし、現実はそう簡単ではありませんでした。

異なる企業文化を持つブランドを統合し、維持していくには膨大なコストとエネルギーが必要です。市場のトレンドが買い切り型のモデルからサブスクリプション型へと移行していく中で、収益構造の転換に苦慮していた部分もあるのでしょう。

私たちが享受している便利で安価なセールやサブスクリプションサービスは、メーカー側にとっては非常に薄利多売なビジネスモデルでもあります。

今回のニュースは、音楽ソフトウェア業界全体が抱える構造的な歪みが、NIという象徴的な企業を通じて表面化した結果なのかもしれません。

デジタル資産の所有権という永遠の課題

私たちは数万円、時には十数万円を支払ってソフトウェアを購入していますが、実はその中身を所有しているわけではありません。

私たちが支払っているのは、あくまでソフトを使用するためのライセンス料に過ぎないのです。もしそのライセンスを管理している会社が倒産し、サーバーが完全に停止してしまったら、私たちの手元に残るのは動かないデータの塊だけになってしまいます。

これは音楽制作に限らず、電子書籍やソーシャルゲームの世界でも常に議論されている問題です。私たちが作り上げてきた楽曲のデータは、特定のプラグインが動作することを前提としています。

もしそのプラグインが失われれば、過去のプロジェクトを開くことすら困難になるでしょう。私自身、過去に気に入っていたシンセサイザーのメーカーが消滅し、OSのアップデートとともに二度と音を鳴らせなくなった経験があります。

デジタル資産の脆弱性と、それに依存しすぎるリスクについて、私たちは今一度真剣に考える時期に来ているのかもしれません。

私たちはこれからどう向き合えばいいのか

では、私たちユーザーは今後どのようにNI、そして音楽ソフトウェアと付き合っていくべきなのでしょうか。

まずは過度に恐れすぎないことが大切です。NIのような巨大な資産とユーザーベースを持つ企業であれば、例え現在の形態が維持できなくなったとしても、その技術やブランドを継承したいと考える企業は必ず現れるはずです。

音楽制作のインフラとしての重要性は変わっておらず、彼らの製品が世の中から完全に消えてしまう可能性は極めて低いと言えます。

一方で、一つのプラットフォームに依存しすぎない柔軟性を持つことも必要です。特定のメーカーの音に頼り切るのではなく、標準的なファイル形式での書き出しをこまめに行ったり、複数の手段で音作りができるようにスキルを分散させたりすることが、長期的な制作活動を守ることに繋がります。

私たちが愛するブランドを支える最良の方法は、彼らの製品を使い続け、正当な対価を支払い、コミュニティを盛り上げることです。

今回の経営再建が成功し、Native Instrumentsが再び私たちを驚かせるような、創造性を刺激するツールを届けてくれる日が来ることを願ってやみません。

音楽の未来を作るのは、企業の数字ではなく、そこで生み出される音と、それを使う私たちの情熱なのですから。今回のニュースを、単なる企業の危機としてではなく、デジタル時代の道具のあり方を見直すきっかけとして前向きに捉えていきたいものです。

音楽制作の環境は常に変化し続けています。ハードウェアからソフトウェアへ、そしてクラウドやAIの活用へと、その形を変えながら進化してきました。今回のNIの件も、その長い歴史の中のひとつの転換点に過ぎないのかもしれません。

私たちが奏でるメロディが絶えない限り、それを支える道具たちもまた、形を変えながら生き続けていくはずです。上品に、そして楽しく音楽に向き合い続けるために、今は静かに彼らの再出発を見守りましょう。

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ブロガー・DTMer。シンプルなモノ・コトが好き。ここでは無料のDTMソフトウェアをメインとした情報、自身で制作した音楽素材の提供などを行っています。

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